2017年6月9日に新たに「民泊」という営業形態の宿泊提供に関する法律「住宅宿泊事業法」が成立しました。
これまでは、適法に民泊を行なうには旅館業(簡易宿所)許可を取って行なう必要がありました。
この度成立した法律では住宅宿泊事業法(民泊新法)による新法民泊という選択肢が付加されます。
2018年6月に施行される予定です。(住宅宿泊事業法案)
民泊の開業
民泊を開業するには、許可申請が必要となります。
「許可申請は何をどうしたらいいのかわからない」
という方も多いかと思います。
「自分では全てできない」「とても全部はできない」→全部委託や一部委託が可能です。
住宅宿泊事業(新法民泊)の始め方
新法の民泊を営む人を「住宅宿泊事業者」と言います。
住宅宿泊事業者になるためには届出が必要になります。
あなたのお持ちの物件を住宅宿泊事業の民泊として提供する場合、「住宅宿泊事業者」として都道府県知事に届ける必要があります。
また、住宅宿泊事業者の義務として下記が義務付けられます。
住宅宿泊事業者の義務
住宅宿泊事業者(家主)は、以下のような管理を求められています。
■宿泊者の衛生の確保
(住宅宿泊事業法 第五条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。
狭い空間に大人数を詰め込むようなことがないように、居室の広さに応じて宿泊者数が定められています。
■宿泊者の安全の確保
(住宅宿泊事業法 第六条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。
宿泊者の安全確保は住宅宿泊事業法以外に消防法や建築基準法で定められた規定も遵守する必要があります。
■外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
(住宅宿泊事業法 第七条)
住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対し、届出住宅の設備の使用方法に関する外国語を用いた案内、移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供その他の外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。
施設内の家電製品の使い方や施設までの電車、タクシー、バスなどでのアクセス方法を外国語で説明した案内書を作成する必要があります。
■宿泊者名簿の備付け等
(住宅宿泊事業法 第八条)
1 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。
2 宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を告げなければならない。
(周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明)
住宅宿泊事業者は、宿泊者の氏名、住所、職業などを記載した宿泊者名簿を作成しなければいけません。
宿泊者も氏名、住所などを事業者から聞かれた場合は告げなければいけません。
■周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
(住宅宿泊事業法 第九条)
1 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、宿泊者に対し、騒音の防止のために配慮すべき事項その他の届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項であって国土交通省令・厚生労働省令で定めるものについて説明しなければならない。
2 住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて前項の規定による説明をしなければならない。
民泊問題で取り上げられている問題の中でも、特に多いものが騒音問題です。
外国人宿泊客が理解できるように外国語で近隣住民へ迷惑がかからないよう注意事項を書いて説明をしなければいけません。
■苦情等への対応
(住宅宿泊事業法 第十条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対処しなければならない。
近隣住民からの苦情受付窓口の設置などが必要になります。
■標識の掲示
(住宅宿泊事業法 第十三条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令・厚生労働省令で定める様式の標識を掲げなければならない。
届出物件で民泊をしている旨の標識を掲示しなければいけませんので、近隣に内緒で民泊事業をおこなうことはできません。
旅館業法違反の罰金
今回の改正での罰金の引き上げとなる旅館業法の違反行為には2種類の違反行為があります。
一つは、旅館業の営業許可を受けずに無許可で営業をおこなう違反行為です。
もう一つは、旅館業の営業許可は受けていて、旅館業の運営上で旅館業法の規定を違反する行為です。
■無許可での営業
2017年3月16日現在では旅館業法の罰則は以下のようになってます。
旅館業法 第十条
左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者
二 第八条の規定による命令に違反した者
「第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営」というのは、旅館業の営業許可を受けずに無許可で営業するような場合です。
「第八条の規定による命令に違反」というのは、旅館業法を違反して免許の取り消しや営業停止を命じられたにも関わらず、それに従わずに営業を続けるような場合です。
こういった違反行為をおこなった場合、今までは罰金の上限が3万円でしたが、改正後は上限が100万円と大幅に引き上げられました。
■罰金と懲役の両方もありえる
今回の改正案の変更点を見てみると上記の第十条一項は以下のように書かれています。
旅館業法改正案 第十条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
今までは六ヶ月以下の懲役か3万円以下の罰金でしたが、今後は懲役と罰金の両方を科せられる可能性もあります。
今後、罰則の強化が顕著になると思われます。